ACT.1  独白

Ep.06  瀬田斎の場合

「せんぱ〜い!」
「おう、斎。遅れずに来たな」
「そりゃ、CD貸して欲しいですもん」
「それだけかよー」
 こうしてどうでもいいような会話をして、友達や先輩とじゃれ合うのは楽しい。自分がホントの年齢に返る時間。真夏生まれの俺はもうすぐ14歳になる。試験が終わったら夏はもう目の前だ。
 ふざけてじゃれ合っているうちに、よろけて机にぶつかった。派手な音を立てて机がひとつ吹っ飛んだ。
「いってー! あ〜あ、教科書とか全部出ちゃった……」
 床にしゃがんで、散らばった本類を拾い集める。
「誰か知らないけど、ごめんなさー……」
「拾うなよ」
 びっくりして、俺は思わず顔を上げた。先輩が妙な顔をして俺をじっと見つめていた。
「……拾わなくていいんだよ、そういうことになってんだ、そこは」
 その時、クラスの雰囲気が変わった。何がどうって上手く言えないけど、絶対に間違いない。
 俺はやっと、朝に先輩が言っていた転校生のことを思い出した。なるほど、ここはそいつの席なのか。そゆことね。
「駄目ッすよ。俺、そういうの苦手ナンです。俺が悪いんだからちゃんとするのは当たり前っしょ?」
 そこにいる誰かが息を飲む音が聞こえた。あっちゃー、こりゃCD借りれなくなるかも……なんて我ながら呑気か。俺は散らばった教科書やら参考書やらを一応入っていた場所に押し込んで、立ち上がった。
「すんません、お騒がせしました」
 ペコリと頭を下げて、それから先輩の顔を下からのぞき込む。
「あの〜、それでCD……借りていいっすか?」
 先輩はものすごくおかしな表情で、俺の顔をまじまじと見た。


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