Naked two



 くしゃくしゃになったシーツに手をついて腰を上げると、各務が俺にくれた妙な代物が視界に入った。
 今はもうその面影を失った、目に眩しいほどまっ白に輝いていたはずの、何の変哲もない綿のTシャツ。三枚一パックになったアメリカ製の安物だ。
 あとの二枚をどうしたかは知らないが、少なくともその中の一枚はさっき俺の部屋の灰色の砂壁に、がつんと釘を打ち込まれて飾られた。
 がつんと打ち込まれたのは壁だけでなく今まさに俺がそういう状況にあるのだが、それはこの際あまり深く考えないでおくことにする。考え始めたら俄に自分が情けなくなって、コトに集中するのが馬鹿馬鹿しくなるからだ。
 歯を食いしばって押し上げられる衝撃に耐える。どちらにしてもそのうち意識が弾け飛んでしょうもない事は何一つ考えられなくなるんだから、少しばかり他のことに気を散らすくらいは各務も笑って済ませてくれるに違いない。
「んなぁ智己、アレ気に入ったか?」
「アレって、何っ……」
「今アレと言えばアレしかないやろ。お祝いの品、俺の大いなる愛ががっちり詰まったバースデイプレゼントのことよ」
 こんなにっちもさっちもいかないクソ忙しい時に全く関係のないことを蒸し返すのは、各務の一番の得意技だ。俺をムカつかせるに足る悪癖だ。
「気に入るも、何もっ……アレを俺にどう、せえっちゅうねん、」
 だらしなく声を詰まらせながら、何とか返事をする。疼きはすでに鳩尾の辺りまで浸食を始めていて、体内に潜り込んだ異物の形をくっきりと俺の脳髄に刻みつけた。
 各務の左手が俺の兆しを無造作に煽る。普段の各務からは想像出来ない繊細で正確無比な掌の動きは、ゆるゆると熔け出している怒りと混乱と自嘲と快感を見事な手際で掻き混ぜて、さらに正体も無くぐしゃぐしゃに崩れ去る様を俺の目の前にぽいと転がして見せる。
 相当やばいと思う。脳味噌が腐りかけてる。恐ろしく快感だ。頭ン中がまっ黄色に光ってやがる。もう来やがったかよ、まずいぞ、こん畜生。何でも良いから気を散らさなきゃあ。早く。早く。急げ!
 目の前の壁には、元は白かったはずのTシャツ。気色悪い肌色に塗られて、ピンクのエプロン型が描かれた。ネックから20センチほど下がった二カ所の、ぽつっと小さな花模様がまた凶悪にいやらしい。
 ああくそあんなモンしか目に入らない自分が恨めしいぜ。
「俺はっ、ぜってー着いひんからな、あんな…………」
「似合うと思うんやけどなぁ。力作やぞ」
「こんの、クソボケが、ぁっ…………」


 裸エプロン。
 それが各務の言う『力作』とやらの題名だ。
 油断して思わず笑った瞬間痛いほどの衝撃が脳天を直撃、俺はぎゃっと呻いて情けなくもあっけなく昇天した。





チバサクラちゃんへの誕生日祝い。