スッゴクやばい感じの18禁。ご注意……
斎と知り合ってもうすぐ一年が経とうとしている。
あっという間の一年だった。その間に起こったことを全部思い返そうとしても出来るかどうか自信がないくらい、いろいろなことがあって。
斎と出会った。
バンドに入った。
恋をした。
キスした。
人前で泣いた。
初めてセックスした。
好きって言った。
指輪を貰った。
中学を卒業した。
家を出た。
斎が中3に進級した。
それから……
つい三日前は斎に引きずられて、家を出てから初めて実家に帰った。「絶対連れて行く」ってそりゃもう、嫌だって言ったらぶん殴られそうな勢いで。
そして、少し早い誕生日プレゼントを義父から貰った。ターコイズブルーのボディにオレンジ色のラインが施されたイタリア製の50ccバイク。
誕生日が来たらバイクの免許を取りに行っても良いって言われた。とりあえず原付。
「もっと大型のバイクが欲しくなったら、出来る限りのことを自分でして、後は親に頼りなさい」って、そんな風にも。
親を頼れなんて、たぶん普通の親は言わないだろうな、と思うと少し切ない。そうでも言わないと俺が何も言ってこないことを知ってるからだ。そう言うことで義父なりに俺との距離を測ってるのだと思う。
そんなふうに……まず思ってることをちゃんと言葉にしてみること。俺が家を出て斎のところで暮らすことを決めたとき、義父と母と俺はそう約束した。
俺たちの間には決定的に言葉が足りない。それが解り始めたら少しだけ気持ちが楽になった。
義父は言った。俺の目をまっすぐ見つめながら、「僕らは初めから家族なんだよ」って……
家族の間に流れる空気は以前とそんなに変わったわけじゃない。何かを伝え合えるようになるにはきっと時間が掛かるだろう。
だけど。
何かが変わっていく予感がする。

「なぁ……、起きてる?」
背中越しに少し寝ぼけ気味の声が聞こえる。斎、起きたのか。ごそごそ体を動かして、狭いベッドの上で何とか身体を反転させた。
日曜日の朝はいつもこうして目が覚める。隣に斎がいて、満ち足りた気分でゆっくり目を開ける。
「ん、……オハヨ、」
「オハヨー」
ヒョイと手を伸ばして髪をイタズラしながら、ニコッと笑う。斎は俺のぼさぼさの髪がいたくお気に入りらしくて、暇があるとこうして頭を触りに来る。俺は髪を弄られるより直接触れられる方が、好き……かも知れない……けど、そんなこと言えるわけがない……から黙って好きにさせてる。
ふと、斎が目を瞬かせた。
「そう言えば、お前の誕生日までもう日がないじゃん。やべっ」
「……何がやばいんや?」
「プレゼントだよ、まだ何にしようか決めてない。何が欲しい?」
「何もいらん」
本当にそう思ったから正直に言う。
「指輪、も貰ったし……それで十分。もう、なんもいらん」
「冷たいなぁ」
目の前の顔が困ったように笑うのが見えて、慌てて足りない言葉を付け足した。
「や、なくてっ……」
上手く言葉が繋がらなくて、口を開けたまま斎の瞳をじっと見つめてしまった。
斎は笑いながら俺の髪を弄っていた指を頬に移動させて、続きを促すように何度もさする。俺の言葉が出てくるまで、何秒でも何分でも、きっと何時間でも。
そんなふうにされるといつも、言葉より先に涙が出そうになる。
「あ、……やから、いっぺんに何個も大事なものが出来たら困るやろ。……お前と、指輪と、で、いっぱいいっぱいなん、」
どうしてこんなに上手く言えないんだろう。
それでも斎にはなぜか伝わる。俺の言いたいことをちゃんと分かってくれる。
「うーん……」
しばらく考え込んで口を開いた。
「じゃあさ、何かして欲しいことは?」
「して……欲しい、こと…………」
「何でもしてやろうっ!」
俺の頬をピンと指で弾いて、にっこり笑った。
「じゃあ、な……」
こんなこと言うのは死ぬほど恥ずかしい。
恥ずかしいと思う自分はもっと恥ずかしい。
「今日、ずっとここにおって欲しい。晩もずっと、……明日の朝まで」
明日は月曜日だから本当は帰らないと大変なのに。
「オッケー」
いとも簡単に返事をする。
「他には? もう終わり?」
まだまだ。
「キス、してくれ」
「いつ? 今?」
「……いま、」
言い終わらないうちに、体を起こした斎に上から乗り上げられる。軽く触れるだけで唇はすぐ離れてしまう。それじゃ満足できなくて、
「もっと」
自分でもびっくりするくらい自然に言えた。
もっと、もっと、もっと…………
言葉が出てきそう、……な、気が…………
「したい、かな…………」
甘え始めたらキリがない。
「……大丈夫?」
斎が気遣うように俺の顔をのぞき込む。俺の身体のことを心配してそんなことを聞いてくるのが嬉しくて、やっぱり少し照れくさい。
ウンって頷いたら、「オッケー」って笑いながらもう一度キスしてくれた。
以前はどうしても言えなかったことが少しずつ言えるようになったら、俺は途端に欲張りになったような気がする。
重なり合う体の重みをもっと感じたいと思ったり、手を握って欲しくて必死で探したり、斎を受け入れたいと思ったり。
そういうことを我慢しなくなった……
「ん、あっ……、」
斎の唇が先端に当たるたびに身が竦む。いつ限界が来るか自分で分からないからだ。
こうして斎が口でしてくれるようになってからずいぶん経つ。
初めは恥ずかしくて死にそうになって、その後斎の顔を見られなかった。でも気持ち良いのは確かで、斎の唇がソコに触れる気配を感じると、それだけで下半身が身も蓋もなくズキズキ疼くのがまた恥ずかしくて。
今は「気持ちイイ」ってことを、……たまに……言えるようになった。
股間に伏せられている頭を両手で掴んで髪をめちゃくちゃに掻き回す。そうしていないと意識がどこかに飛んでいってしまいそう。腰の辺りで脈打つ音が斎に聞こえないかと不安になる。
「っい、つ、……!」
「イきそう……?」
銜えたまま聞いてくるから、唇が動いてシャフトに歯が当たる。瞬間、爪で引っ掻くような刺激が走る。
「あぁんっ! ……あ、あ」
普通なら痛いはずの刺激すら、快感の量がどんどん増していくのを止められない。
「はぁ、あ……ぁ、」
火傷しそうに熱い舌で先の部分を擦られると、知らずに涙が滲んでくる。それが声にもハッキリ出ていて、慌てて声を飲み込んだ。
感じてることを知られるのが恥ずかしい訳じゃないのに、泣き声しか出なくなるとつい息を詰めて我慢してしまう。ぼやけたアタマで必死に別のことを考える。上手くいった試しは無いけど。
斎はそんなことすら知ってるみたいで、俺の手を握り込みながら笑う。
「イきそうだったら、我慢すんなよ……」
言い終わる間だけ離れた唇が俺自身をもう一度くわえ込む。あやすようだった舌がイかせるための性急な動きに変わる。ダメ、だ、もう…………
「……いつっ……、……イ、く……っ………………」
脳がジン……として、瞼の裏でフラッシュが何度も光って…………
「あっ、…………っ」
ギリギリの線を越えた瞬間、思わず声が出た。勢いよく吹き出す感覚に手も足も全身が痺れながら跳ね上がって、いつまでもいつまでも震えが止まらない。
固く目を瞑って痺れるような熱が引くのをじっと待つ。さっきから強く握られていた指が少しだけ弛められると、掌の上をヒヤリとした風が通った。
「目、開けてよ」
斎の声がする。
「んっ……」
短く答えてうっすら瞼を上げると、一瞬焦点が合わないほど近くに斎の瞳があって。
こうして見つめられると目が離せなくなる。瞬きする間も惜しいくらい。
こんな朝が毎日来ればいい。
目が覚めたときに初めて目に映るものが、いつもこの瞳だったらいい。
「オハヨ…………」
掠れた声で言うと、
「もう一回最初っからやり直し?」
笑いながら憎たらしく返してくる。
「そう。最初から、もう一回」
「ハイ、じゃあもう一回な。……好き」
「ソレは違う」
下らないことを言い合って一緒に笑った。
何でもない日曜の朝。特別じゃないあたりまえの日曜日。
とある方の「せめてここ(ウチのサイト)で甘くなりたい」という一言にグッと来た、発作的小品。
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